【 革の豆知識 】
【 皮と革の違い 】
ひとくちに「かわ」といっても、「皮」と「革」には大きな違いがあります。ではいったいその2つの境界線はどこにあるのでしょう。牛に限らず動物の皮は、体から剥いで(この状態を原皮という)、そのままにしておくと腐ってしまいます。それを腐らないように手を加え、皮から革へ転換される作業をなめしと言います。
「皮」という漢字は、獣の皮を手で引き剥がしている形になります。一方、「革」は動物の皮をなめした後の革のことを言います。この漢字は、頭から手足までの全体の革をひらいてなめしていた形になります。ちなみにこの漢字、革命とか改革とかに使われていますよね。これは、動物の皮をなめすことによって違った性質を持つ革に変わります。このことから、「革」には「あらたまる」とか「あらためる」という意味を持っています。ですので、物事が変化するときにこの漢字を使うようになったそうです。
【 革の歴史 】
革の歴史ですが、人間は有史以前から皮を使っていて、狩りを覚え、動物の肉を食べ、皮を敷物に使ったのが始まりであると言われています。現在最も古い革製品として残っているのが、エジプトの墓から出てきた革のサンダルです。当時革製品は、王や神に送る高級な物と考えられてきました。(どこかの博物館にこのサンダルのレプリカがあると聞いたことがあります。)その後、ヘブライ人が皮を草木の汁につけると柔らかくなくことを発見。(これがタンニンなめしのはじまり)これで、加工しやすくなったので生活用品として様々な物が作られ生活に浸透していきました。
ギリシャ時代やローマ時代には、大きな皮革工場があり、衣料や武具、履物などが生産されていました。(つまり2000年以上前から革を作っていました。)エジプトなどでは、革が工芸品としてより進化し、ローマやギリシャでは実用的な物として進化していったようです。その後、中世に入り、キリスト教を中心に革による製本技術が発達、豪華な本が作られていきます。この技術はイタリアやフランスに継承されていきます。現在、イタリアで良い革製品ができるのはこの影響があるようです。
【 なめしとは 】
なめしとは、先程も述べたようにごく簡単に言うと、皮から革への転換を行う作業のことです。なめされて皮から革になることによって、革は皮にないさまざまな特徴を持つことになります。まず第一に、腐りにくく、長期間に渡り変質しにくくなります。第二に、水に浸けてももとの状態に戻らず、乾燥しても膠状態にならなくなる。第三に、充実した風合いを持ち、強靭性が安定する。従って逆を言えば、なめしの方法、あるいはその良し悪しによって、出来上がる製品もずいぶんかわってくると言えます。
なめし方には大きく分けて2種類の方法があります。ひとつがタンニン植物なめし、もう一つがクロムなめしです。クロム鞣しとは、要はクロム鞣剤をつかってなめす方法をいいます。現在使われている革の大部分がこのクロム鞣しでなめされています。 特に衣料として使われている革は、ほぼこのクロムなめしでできた革です。
クロム鞣しの特徴として、
- 耐熱性が増大する。熱収縮温度が120度にもなります。
- 柔軟性、弾力性が上がる
- 酸性染料でよく染色される
などなど、かなり加工がしやすく、強靭な状態になります。
もうひとつが、植物タンニン鞣剤によってなめされる革でこれをタンニン鞣しと言われています。 私達が毎日のんでいるお茶にも、このタンニン(カテキン)が含まれています。 タンニン鞣しは、皮を付けるプールのようなものにつけて作る場合と、大きな太鼓に入れて、グルグル回しながら作る場合、または、その両方を使う場合があります。(主にイタリアのタンニンなめしは、この両方を使ってなめしています。日本と大きく違うところだそうです。)有名な栃木レザーは、タンニン槽(ピット)に入れてなめしています。栃木レザーの革には、ピットから引き上げたり、干したりするときに使う穴が革の端に空いていると聞きます。(実際空いていました。)
タンニンなめしは自然な風合いで、革が好きな方はこのヌメ革といわれる、あめ色に経年変化していく革が好きな方が多いと思います。このタンニン鞣剤にも大きく分けて二つ種類があります。あまり細かく説明しても難しい話になるので、私達が使う過程で影響を受けそうなところの話をします。もともとヌメ革は、肌色、アイボリーの色をしていると思います。この中でもよく見ると赤身かかっている革と黄色っぽい革とあります。たぶん並べてみないと分からないと思います。(私も、並べてみて初めて気づきました。)そして、成分の違いから、赤身がかっている革の方が紫外線の影響で色が変わりやすくなっています。黄色っぽい方が、色が変わりにくくなっています。同じように使っていても、経年変化しやすい革と経年変化しにくい革があります。(黄色っぽい革も、経年変化が比較的しにくいというだけで、色は変わっていきます。)これは、使われているタンニンの原料によって変わってきます。栃木レザーはブラジルのミモザ系のタンニンを使っているようですね。
【 革のお手入れ 】
●普段のお手入れ
普段のお手入れですが、これも鞄、靴、ウェアーによって微妙に違うのですが、汚れはまずブラシや乾いた布で拭き取ってください。あとは使用頻度にもよりますが、適度にオイルを塗り込んで下さい。使い方にもよりますが、1カ月に2回ほどでもかなり状態は良くなっていきます。 スウェードやヌバックのような起毛系の革は、特にシミになりやすいので、必ず目立たないところで試してください。硬く絞った布でもシミになることがあります。最近は、革専用のクリーニングもあるので、レザージャケットやパンツについては、数年に一回クリーニングに出すと、リフレッシュして返ってきます。
●雨の日のアフターケアについて
よく、雨に革の鞄や服がかかってしまった場合どうするかとういう質問を受けます。一番いいのは、雨の降りそうな日は革用の防水スプレーをお勧めします。最近はかなり撥水性のいいスプレーがでているので、行きがけにスプレーをしておくとかなり水をはじいてくれます。また、特にジャケットなどは、購入後すぐに一度薄くオイルを塗ることをお勧めします。オイルを塗ることによって、汚れもつきにくくなります。使い始めの時に、軽くお手入れをするときれいな状態で長く使えることができます。この時、使っているオイルや防水スプレーがご使用の革に合うか、目立たないところで試すことをお勧めします。場合によってはシミになることもあるのでご注意ください。
そうはいっても、急に雨が降ってきたりすることもあります。雨に濡れた場合は、乾いた布でたたくように水分を取ってください。そして急激な乾燥を避け、陰干しをして下さい。この時に型崩れしやすいので、できるだけ形を整えながら乾燥をさせてください。革から水分が蒸発する時に、油脂分が同時に失われていきます。乾ききる前に、いつもより多めのオイルを塗ってください。そして、乾いたら余っているオイルを拭き取ってください。革に水分を含ませたまま放置しておくとカビが発生するので特に注意して下さい。カビは革の栄養分を奪いながら繊維層を破壊し、革を変質させてしまいます。また、カビは一度発生すると革の奥にカビの菌が残り、次にまたカビが生えやすくなってしまいます。
カビが出た場合は、良く絞った柔らかい布で拭き取り、革用オイルを塗り込んで下さい。革から油脂分が失われると、繊維が硬化して脆弱になり、破れやすくなってしまいます。時々オイルを塗ってあげるようにして下さい。ビンテージ感を出すために、オイルを塗らない方もいらっしゃると思います。頻繁に製品を使っている場合は、人間の脂や体温により必要な栄養分が少しずつ与えられていきます。使わない状態で、放置しておくと劣化していくことになります。特にヌメ革の製品は最初に雨や水にかかると、シミになりそのシミがずっと残ってしまうことがあります。まっさらの製品の場合、付属パーツを外して使い初めに、軽くオイルを塗って日焼けをさせると、落ち着いた色になります。軽くアメ色になると多少のシミも目立たなくなり、後あと長くきれいなエイジングを楽しめます。 というような感じで、意外に使い初めが大切という事です。